伊奈かっぺいさんには、大変お世話になった。
そのかっぺいさんのラジオに生出演させていただいた。
こうしてお話しするのは、ずいぶん久しぶりで、声はまったく同じ。
「いやいやもう顔はジジイです」とおっしゃるが、こちらとてそれは同じこと。

番組冒頭に私の「ラストダンスは私と」が流れて驚いた。
音源は三十年ほど昔のアルバム「世紀末の円舞曲(ワルツ)」から。
好きな男を他の女に取られ怒りまくる主人公、という設定で歌っていたが、これが永六輔さんの目に留まり、かっぺいさんとのご縁につながった。

その頃、青函連絡船が終わりを迎え、停泊している船内でのショーで初めてご一緒した。
名前も顔も知らぬ私の歌など、誰も聴く気にならないのは当たり前、わいわいと宴会状態が続く。
ステージが終わり、かっぺいさんにお誘いを受けたことだけで充分な若造の私に、かっぺいさんは謝った。
そして、青森はまだまだダメだと怒った。
そのことに青森への深い愛情と、芸人への尊敬を感じ、まだまだなのは私のほうですという言葉を飲み込んだ。

それ以降も、何回かお誘いをいただき、それはどれも忘れられない仕事になった。
学ぶべきことばかりだった。
悔いることばかりだった。

そんなかっぺいさんも、もう歳をとったという。
信じられない。
本当にそうなのか、これはやはりお会いして確かめねば。

すっかり様変わりした青森駅に、また立ちたい。
私の頭の中では、そこにはまだ木箱にいっぱいのリンゴたちが並んでいる。
誇らしげに並んでいる。