父親が95回目の誕生日を迎えた。
そうだった、今日父さんの誕生日だと気づいたのは、ホームで母親と一緒に面会中。
誕生日関係には、自分のことも含めウトいとはいえ、何という親不孝。

その父さんは、最近、母親と一緒だと怒る。
なんでお前は一緒にいないのだと怒る。
父親なりに、我慢している感情が、母親と会うと吹き出すようだ。

なんで一緒にいない、なんで一緒に帰れない。
その言葉を聞くと、ドキドキしてソワソワする。
人生の最後に、こんな感情を父親に持たせていることに、どうしていいかわからなくなる。
じゃあ、どうすると思っても、どうしようもない。

母親とて、自分の生活がある。
自分の家で、自分のペースで生きることを責めることなどできない。
ショートステイで、短期間でも父親の所に居られる方法もあるが、それも嫌だという。
その気持ちもわかる。

じゃあ、どうする。
どうしようもない。

一年前の写真を見る。
二人で手を繋ぎ歩いている様子や、玄関で三人並んだ写真もある。
去年の夏は、こういう夏だった。

今年の夏は厳しい。
どんどん歩けなくなる父親と、その手を取る母親と。
これからまた、秋が来て冬が来て、春が来て、また夏が来る。

時は止まらないんだなあ。