それはまったく思いがけないことだった。
あ、と思ったら道路にうつ伏せで倒れていた。
昼間のキャンペーンを終え、新幹線で郡山へ向かい、夕食を終え、ホテルへ帰る途中。
つま先がちょっと引っかかった、と思ったら、体全体が伸びた状態で倒れ、しばらく動けない。
翌日の「のど自慢」のことが浮かび、顔がやられていないか、脚は手はと動けないまま確認する。
幸い、外傷は大したことはなかったが、吐き気と倦怠感でどうにもならない。
道路脇のポールに腰掛け、同行したスタッフが背中をさすったりしていると。
「大丈夫ですか」と、通りがかりの自転車の青年が。
こんな時にこんな優しい言葉。ありがとうございますと声にならぬまま。

スタッフが救急車を呼んでくれる。
アタマがやられていると大変だと思ったのだろう。
車内で血圧や心電図、触診。その隊員の方達が、これまためっぽう優しい。
「ごめんなさい、こんなことで呼んじゃって」ひたすら恐縮する私に、「いいんですよいいんですよ」と言ってくれる。
彼らの福島訛りが、優しく滋味豊かで、カチンコチンになっているカラダとココロがだんだんにほどけていく。
病院への搬送はせず、そのまま帰していただく。

そして「のど自慢」では、出場者の皆さんの素晴らしい歌たちに元気をいただき、放送後のアトラクションでは「ヨイトマケの唄」に大きな拍手をいただき、ともう「いただき尽くし」のよう。
ご一緒した水森さんは、いつも変わらず温かく、カラダのあちこちは故障しているものの、無事生きて歌えることに感謝した。

マイクも持てるし、立つことも歩くこともできる。
これ以上何を望むのだ、しっかりしろと、自分にカツをいれた。
生かされている間は、懸命に生きなきゃ。

うん。