来月、新しいCDをリリースする。
毎年、こうして、しかもCDの売れない時代に何とかリリースできる幸せを思う。
周りの方々に感謝するしかない。

今回も、前回と同じシャンソン系。
私という訳のわからん歌い手が、曲がりなりにもこうして歌ってこられたのは、シャンソンのおかげでもある。
シャンソンは年齢を問わない。
それぞれが経てきた時間や時代への思いを歌に込められる、若さが武器にならない音楽ジャンルでもある。

今回は「銀巴里」の尊敬する先輩、金子由香利さんの「時は過ぎてゆく」と、美輪明宏さんの「ヨイトマケの歌」。
そしてライブ音源から「わが麗しき恋物語」と「幽霊」の四曲。

新録音の二曲は、大貫さんにアレンジをお願いした。
こんな感じでと色々なイメージやら楽器やらを相談し、カタチになっていく。

昨日、テレビ収録で「ヨイトマケの歌」を歌った。
長い歌なので、テレビ歌唱はむずかしいところ、このような機会を与えてくださったスタッフに、また感謝を深くする。
ただただありがたい。

この歌はいろんな方々が歌われている。
まさか、自分が歌うことになるとは思ってもいなかったが、歌ってみると、心の扉、記憶の扉がどんどん開かれていくようで驚く。
昭和を生きた人々や、失われた風景が立ち上ってくる。
この歌は、ドキュメンタリーだなあと思った。
そして紛れもなく、日本のシャンソン。
メイドインジャパンの素晴らしいシャンソン。
世の中の理不尽への怒りとか、それを越えた希望とか喜びとかが、言葉を超えて溢れてくる。

そして「時は過ぎてゆく」も、大好きな歌だ。
ちょうど三分くらいの短さに、さまざまな色の感情が生まれる。
生まれては消える、それこそが「時間」なのだと思える。

今回、金子由香利さんと、金子さんのファンでもあった山口百恵さんとのご縁を繋いだ残間理江子さんに、プロデューサーとして、お力をお借りした。
CDのブックレットにも寄稿していただいたのだが、そこには昭和の時代と人が、愛おしくなるほど生き生きと描かれている。
本当にありがたい。

ありがたいことばかりだ。
あとどれだけの時間が、あるのかないのか、それはわからない。
でも、生まれてきて良かったなあと思える歌を歌えるのは、幸せなことだ。
ひとときでも、こんな幸せなことはない。