私は拝見することができなかったが、昨夜の「うたコン」で菅原洋一さんが素晴らしい歌声を披露されたとのこと。
菅原さんと伴奏の大貫さんのSNSでも、その喜びが伝わる。

昨年の私のコンサートでも、菅原さんの歌声は奇跡のようだった。
奇跡というのは失礼だが、もう少しで90才の声、そして歌心は若い人にはとうてい真似できない深みを増している。
逆にいうと、歳をとることが素敵なことに思えてくる。

菅原さんは、もちろん若い時にも素晴らしい声だった。
張りのある朗々とした立派な声。
どこまでも行けてしまえそうな果てない地平線に立つような声。
それが年齢と共に変化する。
否応なく変化する。

歌い手なら誰でも経験するアレコレがやってくる。
カラダは衰え、耳の機能にも不安が出てくる。
聞こえるはずの音の聞こえ方が変わってくる。
私ごときでも、時々言いようのない不安が襲う。

菅原さんは、そんな大波小波を全部越えてこられた。
見果てぬ地平線は、もう菅原さんご自身の胸に中にある。
それを温め、慈しみ、歌われる。
すると、その見果てぬ地平線は、もっともっと遥かに、聞くものの胸にも広がる。
ああ、生きるって素晴らしいことだな、と思う。

こんな素晴らしい歌い手になれるだろうか。
いやいや、今はただジタバタするしかない。
いやいや、今ジタバタすることが、いつか遥かな地平線を持てる方法なのだ。
その時々を、溺れそうになりながらも懸命に泳ぐこと。
それしか、菅原さんに近づく方法はないのだ。

ただただ、偉大な先人に感謝と尊敬を。