五月だ。
テレビをつけると相変わらず大谷さんのことばかり。
いくらなんでも、こんなに大谷さんばかりでいいのだろうかと心配になってくる。
世界はどんどん変わっている。
日本もどんどん変わっている。
人もまた。

母親と夕食をなるべく一緒にするようにしている。
凝ったものは作らないし作れないが、それでも、時々母親がつぶやく。
「あたしは何もしていないのにねえ」

自分はずっと座ったきりで、ご飯を食べているという申し訳なさと不甲斐なさなのだろう。
「95歳でパキパキ動ける人っていないよ」と言うと、そうかしらと安心したように言う。

頭の方はかなりキチンとしている人だが、やはり理解力と想像力が減っている。
それはこうこうでとゆっくり説明しても、母親の壁は固く頑丈だ。
そうなんだな、これが老いなんだなとわかってはいても、イライラしてしまう。
そして、そんな自分がナサケなくなる。

結局、全部が自分に跳ね返ってくる。
老いた者相手では、子には初めから勝ち目などないのだ。
弱いものイジメみたいな、イヤな気持ちだけが残るのだ。

「五月の空」という歌があった。
「INORI」とのカップリングだったが、詞がちあき哲也さんだった。
認知症のお母さんと娘の歌だった。
レコーディングで、ちあきさんが泣いておられた。
その時にはわからなかったあれこれが、今なら私にもわかる。
すごく、わかる。
そのちあきさんも、今は遠い空でお母さまとご一緒におられる。

そちらの空はどうですか。