仕事を終え、スマホを見ると父親のホームからの着信。
このところ、こういったことが増え、そのたび、心臓がきゅっとなる。

昨日は、やはり朝の転倒のその後のこと。
往診をしてもらったが、やはり外科的処置をということで、病院に行ったとの連絡。
4針ほど縫ったそうで、すぐに会いにいくことにする。

出てきた父親は、思ったより元気。
転倒のことも、病院に行ったことも、そして痛いということも忘れている。
ただ、だれも会いに来てくれなくて寂しかったという。

一昨日来たばかりだよ、といってもわからない。
よくよく聞いてみると、もうとっくに死んだ兄弟のことを言う。
「みんなもう天国に行ってるんだから、こっちじゃ会えないよ。父さんがあっちへ行ったら会える、みんな待ってるよ」
と、言ってみる。
ほんとに、みんな父さんを待っているような気がしてきた。

父親は遠く澄んだ目をする。
だんだんに自分が遠くなっているようなのだ。

「結婚しないのか、いい人いないのか」
と突然言う。
独り身の娘の行く末を、心配しているのだ。
こんなにヨレヨレなのに、こんな心配をする。
また、胸が苦しくなる。

春は爛漫だ。
桜は散って、ハナミズキが咲いている。
白も薄紅色も、本当に綺麗だ。