ひょいひょいと出かけにくい私のために、友人が近くの駅までやってきてくれた。
ちょうど用事があるので、それまでの一時間半ほど。
しゃべることは、まあ、いろいろあるもので。


「エゴイスト、見たんだって?私も封切りすぐに見たよ。ああいう題材の映画が作れるようになったんだねえ、日本も」
から始まり。
「松山ケンイチの映画、すごかった」
「ロストケア」という介護殺人の映画らしい。
これ見て、あちこちで号泣する声が聞こえ、見るとみんな男性だったという。
「そりゃあ、私だって泣いたけど号泣ってすごいよねえ」

そういえば、以前見た舞台でも、終わりごろにすすり泣きがあちこちから聞こえ、これまたみんな男性、つまりオッサンだった。
その舞台は、母と息子の物語で。
「なんかさあ、男って、介護とか母親とかっていうやつに、すぐ泣くよねえ」
「そうなんだよ、実際の生活では、全部逃げてるくせにさあ」
「女は泣いてなんかいられないんだよ、自分がまっさきになんでもやらなきゃならないんだからさ」
「うちなんか、姑にいじめられながら30年同居だよ、仕事があって外に出られたからしのげたけどさ、夫なんか、全然頼りにならない」
「逃げるんだよねえ」
「そう、逃げるの、男って」

ともあれ「ロストケア」は見なきゃと思った。
つらい映画らしいが、これは見ておかなきゃと思った。
「これ見てさ、私思ったよ、子供にぜったい迷惑かけられないって」
「安楽死って、日本じゃ犯罪だもんね」
なかなかに、シビアな展開だ。
でも、これがきっと現実なのだ。

「それはそうと野球って、そりゃあ楽しませてもらったけど、なんでずっとやってるの」
「そうなんだよ、朝いつものテレビ見ると、みんな野球だったよ。今日なんか大谷の年俸の話だった」
「選挙も近いのにねえ」
「政治とかからわざと目、そらさせてんのかなあ」
「なんかこの国、どうなるんだろう」

と、オバサン二人は、国の行く末を憂い、コーヒーをすする。
アッと気づくと、もう5時。
彼女は、地下鉄へ。
私は夕ご飯の買い物を済ませ、母親の家に。
持つべきものは友人。
そういう友人たちを持ったことに、感謝した。
女友達には、ほんと、助けられるわあ。

あ。もちろん心ある男性諸氏にも感謝しておりますです。
いつもほんとにありがとうございますっ。