ライブが終わったら、肩の痛みが引いていた。
年末年始の間の、積もったストレスの氷山が溶けていったのだろう。

ギター、バイオリン、打楽器、アコーディオン、琴、薩摩琵琶。
この時だけ集まったメンバーが、この時だけの演奏をする。
リハーサルの時とは全然違う熱量。
特に、インストルメンタルだと、もうバトルな感じさえする。

女性演奏家(和楽器)の方たちが楽屋に戻って来られる。
頬が紅潮している。
「おじさんたち、すごかったですねえ」
なるほど、ライブは戦場にも似ている。


天国のヤドランカさんが繋いでくれた地上での縁。
この天国からの糸に操られるように、皆が集まる。
旧ユーゴスラビアの歌姫。
日本に来ている間に内戦で、帰国不可能。
やっと帰れるようになったら難病に。
これでもかというように襲う不幸。
それがあまりに苛烈過ぎて、そのことを思うたび、涙が出る。

そのことを、ライブ後にお会いした湯川さんと話す。
「なんでヤドさんにはこんなことばかり、神さまなんていないって思っちゃいます」と言う私に。
「そうじゃないと思うわ、私たちにはわからないけど、ヤドランカがこの世から離れるとき、きっとものすごい幸せが彼女を包んだと思う」
その幸せの光は、もう私たちの想像を絶するものなのだと。

一緒に聞いている薩摩琵琶の坂田さんの眼が潤んでいる。
みんなが、こうしてその「光」を信じる。
自身が女神だったようなヤドランカさんが、まぶしい光の中微笑んでいることを信じる。


ヤドランカさんのライブの最後、「愛しかない時」を唄う。
この歌をアンコールにもってきてくださった、主催の友利さん。
ヤドランカさんを今でもココロの軸に、数々の困難を乗り越え、ライブを開催された。
裏方を手伝う女性もまた。
こうして、天国の女神は、この国にたくさんの女神たちを残してくれた。


何とも意味深いライブが、歌い初めになった。
すべての皆さまに、感謝いたします。
ありがとうございました。