角打ち。
この言葉を知ったのは最近だ。

酒屋さんの一角で立ち吞みができる店。
そういうの、そういえば、以前からあったが。
ちょっと前に「ドキュメント24時間」で、そんな店が舞台になった。
その店って、ありゃあの店じゃんな、よく通る店だった。

知らなかった、あの店の奥にそんな社交場があるなんて。
正月にその近くを通って外から見たら、いるいる、何人かのお客が昼飲みしている。
いいなあ。

でも、思い出した。
母方のおばあちゃんも、そんな商売してた。
町の酒屋だけど、店の奥に樽を置いて、栓から升酒注いでた。
とくとくとくとく。
その音が、まあ何ともいいのだ。
子供でも、舌なめずりしそうな音。

来てるのは、労働者ばっかり。
荒くれモノもいただろうけど、酒の飲めないおばあちゃんが、しっかりと仕切っていた。
なかなかの女傑だった。

父親のあぐらの中にすっぽり収まって、おちょこの日本酒を舐めさせてもらう。
その旨いこと。
脳天直撃の旨さ。
大人になればこんな天国みたいなものを飲めるんだ、と本当にうれしくなった。
大人になる楽しみに震えた。

で。
今はもう、すっかり大人になって。
酒の類は、人と会う時一杯ほど。
なあんか、残念。
天国を通り越してしまった気分。

父親のいない二回目の正月。
お酒は登場しなかった。
お屠蘇も今年からやめた。

こうしてだんだん酒仕舞いになるんだろうか。
ああ、残念。
人生って、なんて早い。