おそらくどこにもどこでもあるようなこと。

父親のホームに、時々、母親を数時間預かってもらっている。
私が一日どうにも行けない日だけだが、これは、父親だけでなく母親にも良いことのように思えた。
世代の違う職員さんたちとの会話は、やはり人を活性化する。
ところが。

そのおそらくどこにもあるようなことが起きた。
父親を自分の夫だと思い込んでいる女性が、嫉妬をするのだという。
父親より数カ月遅れて入ってきたこの女性を、はじめ、父親は親切にしていたらしい。
それが原因か、女性は、父親を「お父さん」と呼びはじめなんやかやと世話をやきはじめたという。
それがあまりにうっとうしく、私たちの息子がどうとかこうとかと言うにいたって、「俺に息子はいない!」と怒ってしまったらしい。

二人をなるべく遠ざけている職員さんたちだが、母親の登場で、またも新展開。
なんで自分のお父さんの隣に知らない女がいるのよ、と、その女性は母親をじっとにらむ。
ナニカシラ言いに寄ってくることもあるという。

「もう気持ち悪くてやんなっちゃうわあ」と母親が言う。
ボケた人の嫉妬は私も経験がある。
妬みそねみ満載の眼差しは、本当にイヤだ。
相手がボケていると思っても、イヤだ。

それを今母親が経験している。
なんともまあ。
こんなこと、きっとどこでもあるのだろう。
いくつになっても人は夜叉なのだろう、阿修羅なのだろう。

でもまあ、刃傷沙汰にもならんだろう、とタカをくくるしかない。
幼稚園でも老人ホームでも、こんなことは起きる。
どこでもいつでも起きる。

ニンゲンて、まあ、なんという生き物だろうとまた思う。
やれやれ。