コンサート会場から買い物に出たスタッフヤマザキが興奮したように。
「ビックリしました。ぼく虹見ちゃったんですよ」
雨上がりでもないのに、その虹はほんとの一瞬、建物に沿うように立ち上がり、消えたという。
それでも、その一瞬をカメラに収めることができたのは、やはり天のご褒美のように思えた。
11 年前立てなかった舞台は、新しい舞台に変わり、あの時と同じものは何もない。
街も人も、そして私も、変わった。
あの時、痩せた青白い顔で日和山を案内してくれたコンノさんは、元気の満ちた顔で大きくなった息子さんが隣りに。
みんながあの時から、私の縁者になった。
そんなおおくの人たちに支えられ、コンサートはあったかく熱く終わった。
いろんなこと、あったなあ。
いろんな涙、出たなあ。
いろんな人に、出会ったなあ。
いろんな人と支え合ったなあ。
あんまりいろいろあり過ぎて、蓋の壊れた宝石箱みたいに、大切な思い出たちが溢れでて収集がつかない。
ぼとんぼとんと、ちっちゃな思い出もおっきな思い出も、次から次へ。
その思い出たちの中で、私は呆けたようにたたずむ。
私は、なんとか生きてこられました。
歌ってこられました。
多くの魂たちが天に揺れ見守る街で、また歌うことができました。
このコンサートを作ってくださった多くの皆さま。
心を寄せて、遠方からもお越しくださった皆さま。
本当に本当にありがとうございました。
今、東京へ向かう新幹線の中、また虹のことを思っています。