今はいろんなところで外国人が働いている。
私のイトコの働く薬局にも、父親のホームにも。

声が大きくて、仕事できるの。
と、イトコは言う。
なるほどと思う。
大きな国で育ってきた彼女たちに、この国の「遠慮」とかはない。
思ったことを言い、思ったとおりにやる。
他国で生き抜くだけのスキルも根性もあるし、ちょっとトロいイトコなどは、あれあれとはっぱをかけられているらしい。

父親に面会に行くと。
初めての職員さんと出会った。
彼女が父親を連れてきてくれていた。
声が大きい。
はっきりとした物言いをする。
そして目をくっきりそらさずに私を見る。

名札の姓は日本名だったが、あきらかに中国系の人だ。
「おとうさまはスゴイですよ。このお歳だったら、もう歩けません。なのに歩こうとしています」
と、くっきりはっきり言う。
でも、車椅子の用意はしておきますと、テキパキと取りに行く。

なんだかすっかり感動してしまった。
感動と感謝で、その人のはちきれんばかりの腕を触ってしまった。
こんなことは始めてだった。
もちろん、いつでも職員のかたがたには感謝しているが、言葉以外に、思いもかけず自分の手が出てしまうことははじめて。
自分で自分にびっくりした。

そして。
「ありがとう」と、彼女に伝えた。
その親身さにお礼を言った。
日本人にはできない、垣根をすっとばしてしまう、その熱情に驚き、すっとばして入ってきた直截さに、感謝した。


これまで、やはりちょっとした偏見があった。
こういう現場には、機微のわかる人でなければと思ってもいた。
それを恥じた。

もうそういう時代ではないのだろう。
ニンゲンはニンゲン。
みんな同じように親を持ち、育ち、生きる。

差別意識など自分にはない、と思って生きてきたが、知らず知らずに他国の人への身構えが生まれていた。
リセットしなきゃな、と思った。
こんな世界状況だけど、ココロのリセットは必要だなと思えた。
まったいらに、人を見ること。
まっさらに、人と対すること。

どんどんかさぶたのように重なる偏見に、取り込まれぬよう、縛られぬよう。
これからを生きねばな。と思う朝。