ホームに行くと。
父親はもう、前の日のことを忘れていた。

私も母親も、それぞれが不安な夜を送っていたのが、それこそ夢のよう。
ああ、良かった。

でも、基本的なことは変わっていない。
確実に弱っていく老人であること。
その証拠に、一生懸命に元気を強調していた父親が、椅子から立ち上がると、よろよろと壁に手をついた。
顔が白い。
こうして、歩くことが日ごとに難しくなっていく。


数分で更新されていく父親の記憶。
それでも。私や母親と会うと顔が輝く。
喜びで輝く。
一瞬しかない、一瞬しかない。
また、このフレーズが浮かぶ。


あ。そうでした。
今日は、久々のシャンソニエライブ。
銀座の「蛙たち」で唄います。
今日は大貫さんのピアノ一本。
休憩なしの一本勝負のよう。

あ。それから。
今週末には、南相馬でコンサートがあります。
震災後、テレビロケでうかがって以来。

一雨ごとに冬が近づく秋。
一瞬一瞬を、大切に胸に刻みたいなあ、と思っています。
一瞬は、きっと永遠ですから。