電動キックボード。
これを初めて見たときは驚いた。
すすすすううううと、道路を走っていく。

昔はこのキックボードは自力だった。
たしかスクーターとかいう名前で呼んでいた。
子供の乗り物だったはずで、子供だった私は、これに乗りたくて仕方なかった。
アブナイからダメ、というのと、おそらくそんな経済的余裕もなかったのだろう、買ってはもらえず。

でも、乗ってみたいという思いは、消えることなく、そのうち歳をとってしまった。
残念なことだけど、乗れないカラダになってしまった。
口惜しい。

近所には、電動キックボードのステーションのようなものができた。
いつも覗く。
憧れで覗く。
いいなあ、乗りたいなあ。といつも思う。

でも、この乗り物。
どう見てもあぶない。
バイクや自転車よりあぶない。
なんたって一枚の板の上に直立して移動してるのだ。
ヘルメットもなしに、幹線道路や歩道を進む姿はあやうい。

あぶない、あやうい。
でも、ああ、乗ってみたいと思う。
人生でやり残したこと、っていう項目があったら、まっさきにこれを書く。

試しに、ちょこっと乗るだけ乗せて見てはもらえぬか、とも思う。
走らないから、ただ板上に乗せてもらいたい。
でも、そんなこと言い出せないでいる。

気持ちは子供のままなのに、その容れモノは古くなってしまった。
子供と老人(といってしまおう)がせめぎ合う。
自分の中の子供と老人は、いつもこうして折り合いが悪い。
困ったもんだ。