エリザベス女王の国葬。
そして、アベさんの国葬。

どちらも長い行列に驚いた。
エリザベス女王の場合は、半日かけても辿りつかない長さで、英国民が行列に並ぶ、そのことに驚いた。
へえ、イギリス人も並ぶんだ。

行列に並ぶ、というのは、その先の目的に従っていることを示す。
そして、長時間、悼むという「想い」を持続しなければならない。
脚の疲れや痛みと闘いながら、その「想い」を持続させる。
いや、その闘いがあるからこそ「想い」が持続できるのかもしれない。
どこか禁欲的スポーツ選手にも似ている。

私には、無理だなあと思う。
どんなに敬愛する人の葬儀でも、それは無理だなあと思う。
ヘコタレ体質なので、すぐにあきらめる。


国葬中継は見なかった。
見なかったが、あとでスガさんの弔辞を聞いた。
この人は、本当にアベさんが好きだったのだなあと改めて思った。
それまで、アベさんに対する眼差しが、恋する人のようだなあと思ってはいた。
アベさんはスガさんの憧れだったのだろう。
すべてが憧れだったのだろう。
読み上げる声が、時々震える。


ずいぶん前。
敬愛するシャンソン歌手の高野圭吾さんの葬儀に参列した。
シャンソン仲間がみんなで送った葬儀だった。
棺の中の高野さんの顔を見た時、歌詞のように「自分でも呆れるくらい」泣いた。
本当に驚いた。
私はこの人をこんなに好きだったのだ、と驚いた。

葬儀は時として、人を裸にする。
スガさんもまた、その一人だった。