通し稽古。
この公演は、主催が装束の会社。
奈良平安の装束や道具などを、現代に蘇らせている。

前回の私の衣裳は、奈良のやんごとない立場のかたのものだった。
足さばきの良い、ズボンのようなカタチ。
そして、面白かったのは、飾りとして前のほうに二本の鳴り物のようなものが垂れている。
これは歩くとしゃらしゃらと鳴る。
「私が今ここにいますよ」という周りへのお知らせになる。目下の人々への、配慮と思われた。


今回は十二単を着る。いや、着せていただく。
一生に一回、なんとしても着てみたかった。というのが本音だ。
写真撮影では、思いのほか似合ってしまって、慈愛に満ちた乳母のようだった。
でも、その装束は清少納言さんのものだった。
宮廷で働く元祖キャリアウーマンともいうべきか。

清少納言さんは、もっともっと若くぎらぎらと野心も持っていただろうから、そのあたりを想像しながら着せていただく。
ちなみに、天童さんは紫式部。
二人のやりとりの歌「まくらことば」は、前回も大好評で、今回はさらに三番を追加してボリュームアップ。


昨日の通し稽古では、日本の楽器たち、伝統の田楽の踊りなど、見ているうち、すっかり興奮してしまった。
そして、それらを今の人たちが、その肉体で表現し受け継ぐことの素晴らしさに、胸が熱くなった。

思えば、この伝統芸能は、大学でレポートを出したことがあった。
久しぶりに行った授業が、あろうことか卒業試験の日。
教師に泣きついて、レポートに替えてもらったのだった。
「あなたの地域の伝統芸能について書きなさい」
これが教師の出したテーマ。

すぐに図書館に行った。
ほとんど丸写しだった。
時効ではあるが、なんともナサケナイ有り様だった。

そんな若き日のアヤマチさえ思い出す。
そして今、その伝統芸能に血沸き、肉踊り、そして涙しているのだ。

人生って、まあ、なんと愚かで愛おしいモノか。

さて、これから母親の訪問診療。
そして夕方には明治座入り。

今日も暑いぞ。
ヘコタレナイぞ。