朝。まず母親の訪問診療。
美男美女の、先生と看護師長さん。
人柄もよく、このお二人が入って来られるだけで、華やぐ。

この日は血液検査。
初めは三か月に一回しようとしていたので阻止した。
老人の血をそんなに取ってどうする。
よくよく思えば、これ、医療機関にとってかなりオイシイ。
利益が出る。

そこへいくと、父親のホームは定期的には一年か半年に一回程度らしい。
たくさんの人を一度に診られることで、毎月の診療経費も安い。

私など、ここ数年こういった健診をしていない。
両親の長生きを見ているうち、そして、もともとそうだったのだけど、それに輪をかけ長生き願望は失せた。
言葉はまったくヒドイが、がん検診などは「手遅れ」までしないつもり。
高額な終末医療費だけを、何とか用意しておきたいと思う。
(そんな甘いもんじゃないぜ、それに他の病気だったらどうするつもりだ)


母親のところから、父親のホームに。
父親は、私一人で行くとけっこう元気なのに、母親が行くと、べしべしと泣く。
二人でずっと一緒にいようと泣く。
そんな父親を見て母親は、生きる意味を取り戻すのか、帰宅するとたいてい元気になる。

それから仕事に行く。
しばらくぶりに会った佐和子さんと、介護話で盛り上がる。
今、まさにこれが誰もの関心事になってきている。

ヤングケアラーも含め、介護の問題はどんどん大きくなる。(子供が介護をしているなんて、少し前には想像もしていなかった)
今は、そしてこれから、いったいどういう時代、どういう世界になっていくんだろう。


それからもう一つ仕事をして、一日が終わる。
この頃、仕事も家族の世話も、もう同じ地平線上な気持ちがする。
仕事をすると気分転換になるけど、そこは逃げ場ではない。
カラダの右と左が分けられた衣裳を着て、踊ったりする芸があるけど、そんな感じがする。
分かれてるけど、同じ一人なのだ。
いつでもどこでもついてまわる、同じ一人なのだ。
やっぱり「人生に逃げ場はない」のだ。


さあ。
今日はシャンソン歌手になる。
「パリ祭」。
早めに出かけ、皆さんが心を込めて作られた舞台のリハーサルを見よう。
綺麗なドレスや綺麗な照明を見よう。
うん、そうしよう。