あやうくスケジュールをとばしそうになった。
時々で、スマホのスケジュールを確かめて、それを手帳に書き込んではいるのだけど、うっかりしていた。

確認の電話が来て、それからあわてて支度をする。
そして、このところの暑さで増えた仕事の一つ、植木鉢の水やり。
これをしに親の家に行く。

どうせ、来月には、処分するものも多いが、だからといって今水やりを止めることはできない。
このあたりの矛盾に、胸がちくちくするが、もうどうでもいい。
ただ、今、目の前にあるものは、なんとかせねば。

それを終え、駅に向かう。
今年初めて日傘を使う。
その日傘の重ささえ、暑い。

早く着き過ぎて、駅前の小さな駅ビルに入る。
その二階には、大人可愛い店がある。
大人可愛い、というのも、わかる人にはわかるだろう。
どんな年代でも、着ようと思えば着れるものたち。
少女でもおばあちゃんでも、着れる。
そんな風味。

この駅に着くといつもここに寄る。
そして、買う。
そして、たいてい失敗する。
良いと思ってうれしくて買うのだけど、家で着てみるとどうも違う。
少し襟が広いとか、肌触りが今一つとか。

そして今回。
その原因がわかった。
この店にはシャンソンが流れているのだった。
甘く美しいメロディと、お菓子みたいなフランス語、そしてアコルデオンの郷愁にも似た切なさ。
そんなものが流れている店にいると、目の前にある服たちが三割増しで魅惑的になる。

そうして。今回も。
ブルーの麻パンツと、黒白のまだら模様のトップス。
この二つを買ってしまった。

それから、仕事に行き。
番組中で「シャンソンの魅力ってなんでしょう」という質問を受け。
「それが流れている店だと、つい目の前の服を買ってしまいたくなる、そんな魅力でしょうか」
(なに言ってんだか)


案の定。
帰宅して着てみると、この上下が全く合わない。
想像と違う。
シャンソンは、人を惑わす媚薬のようだ。
ダマされたと思っても〈ダマしてないし)、あのひとときの幸せを思うと、それでいい気がしてくる。

女性に何回ダマされてもコリない、幸せな伊達男のような気分になってきたぞ。