図書館から借りてきた本が二冊、置いてある。

先だって、通りかかりに衝動的に借りてしまったのだ。
借りたら返さねばならない。
そのことは重々わかっていたのに。

今、図書館に行くのも難儀だ。
駅のあっちかたなので、毎日通う母親の家とは正反対。
駅にすると二つ離れる。

父がいなくなって、母との時間がいやおうなく増えた。
「あたしは一人暮らしよ」などと母は自慢げに言うが、94才のニンゲンをずっと一人にはできない。

そうすると、半日近く一緒にいる日が増える。
夜ご飯を終えると、もう、どこにも行けない。
もちろん図書館は無理。

どこでもいつでも好きなように、ふらふらと散歩していた日々が遠い。
そんなことに不平を言うのも、はばかられる。
でも、時々どうにもならないモヤモヤが溢れる。

大丈夫よ、あたしは一人で。
と、きっと母親は言うだろう。
でも、その裏側の気持ちをソンタクする娘がいる。
ソンタクしっぱなしだ。
もはや、それが正しいのか正しくないのかさえわからない。

いかんなあ。
これじゃあ。
まだまだ先は長いのだから。
(100才を覚悟した)

それにしても。
この本二冊、なんとかしなきゃ。
気持ちは焦っても、カラダがいうことをきかない。

自由な時間って、人生では案外と少ないものだなあ。
しみじみ思う最近。