ここのところの梅雨寒。
湿気を持った寒さというのは、けっこうこたえる。
冬とは違い、梅雨の寒さは、暑さとのハザマにある。
だから、よけい対処がむずかしい。

ちょっと動くと暑い。
でも薄着だと寒い。
私もこの梅雨寒で、体調を崩し気味。
昨日など、背中に温熱シートを貼り、葛根湯を飲み、たくさん着こみ。

母親もまた、このところ体調がすぐれず。
元気はあるものの、毎日欠かさないシャワーも2日間お休みしている。
「もう歳だから、ちょっと具合が悪いと用心するの」と言う。
じりじりじりと衰えはやってくる。


一階の、父のいなくなった部屋のベッドで昼寝をする。
本を読んでいると眠くなってしまう。
ややしばらしくして、二階の居間が静かなことに気づく。
上がってみると、母親がいない。
え、まさかと、母の部屋を見ると足が見える。
昇りかけの階段途中で見える母の足に仰天する。

母親が、ベッドにひっくり返って寝ている。
こんな母を見るのは初めてだ。
母さん母さんと声をかけ、カラダを揺らす。
母は、ゆっくり目を開ける。

「死んじゃったかと思った、びっくりしたよ」
と、その手をさする。
ホームに行くといつもさする父の手だけど、母の手もさする。
二人の手は、やっぱり94才の手だ。

100才まで頑張ろう、なんて言いながらさする二人の手だけど、さする時は、いつも哀しい。
ふうと冷たい風がどっかに吹いている感じがする。
その風を追い払うために、さすっている気がする。

今日は、近くのイトコが来るという。
具合が悪ければ断ったほうがいいよ、と母親に言うが、誰かが来ることが、来てくれることが、うれしいらしい。
「気遣ってもらえるなんて、うれしいわよお」と言う。

気遣いっぱなしの娘は、ちょっと複雑な気持ちがする。