ケーブルテレビには、いろんなチャンネルがあって。
そのうちの一つ「時代劇専門チャンネル」。

私の家も親の家も、ジェイコムが入っているのだけど、老親二人がそれを見ることは、これまでなかった。
ほらほらこんなもの見られるよと、何度言っても、使われることもなかった。

それが。
母親一人になって、夜の楽しみがこの「時代劇専門チャンネル」になった。
7時から三匹シリーズ。
(高橋英樹、役所広司、小朝の名作トリオ番組だ)
そして、里見浩太朗モノや、丹波哲郎モノなど続く。
丹波さんの鬼平は、吉右衛門ファンの母親もえらく気に入ったらしく「姿がいいわあ」と言う。

「だって、普通のテレビ、全然面白くないんだもん」と、母親の夜は、江戸時代になる。
それも良くできた作品だらけで、昔の時代劇の勢いが懐かしい。

テレビドラマだけではなく映画も放送されるので、二時間を過ぎるものも、見ることになる。
「岡田しょうせいっていうの?この人、いいねえ」と言うので、よくよく聞くと「岡田将生」だったりする。

先だっては「桜田門外の変」の映画があったらしく、それにショックを受け、胸の苦しい日々が続いていたようだった。
三年待って殺されちゃうんだもんねえ、としばしばため息をつく。

こうして母親は色々な日本映画を見ることにもなった(時代劇だけだけど)。
若い日から閉ざされていた感動の扉が、ぎいと開かれた。
スゴイことだと思う。


でも、これで、夜更かし老人は、ますます夜更かしになって、でもまあいいんじゃないと思う。
早く寝ることがカラダの健康には良いとしても、ココロのことは立ち入れない。

好きなことを好きなように。
子供の頃から戦争に明け暮れた世代だからこそ、今、好きなように生きればいい。暮らせばいい。

それに。
素敵な人たちを見て、あらあと胸を熱くすることほど良い健康法もないだろう。
やっぱり恋心や、憧れって、いくつになっても人を助け潤すのだなあ。

いいもんだなあ。