コロナの間、ご無沙汰していたビクタースタジオに行く。
ここにマスタリングスタジオがあるからで、一番奥の部屋がカワサキさんの部屋だ。

カワサキさんは、この業界の大御所で、たくさんのアーティストと関わっている。
なのに、世の中には、大御所なのに大御所らしからぬ、巨匠なのに巨匠らしからぬ人というのがいて、カワサキさんもその一人だ。

もちろん、音の作業に関わっているときのカワサキさんの背中は近寄りがたいものがあるが、くるりと椅子をまわしてこっちを向いた瞬間、もう気のいいカワサキさんになっている。
「気のいい」という言い方はどうかと思う。
でも「気のいい」とは、「気が良い」。
まさに良い気を持っている人ということだ。

人によっては歳月とともに、それを失う人もいる。
上機嫌な年寄りが少なくなるのは、そのせいだろう。

私もひとのことはいっていられない。
日常の重さに、機嫌がどうしたこうしたどころじゃなくなっている。
ふと気づくと、口角がダダ下がり。
いや、全体が下がって、何だこりゃと唖然とする。

そうだった、そうだった、どんな時も上機嫌を見つけなきゃ。
気持ちを上向かせる種を探さなきゃ。

そこへいくと、このコロナ禍の数年で、激変した音楽業界にいるカワサキさんだって、大変だったはず。
なのに、少しも変わっていない。
変わらずドローン遊びをしているらしい。
上機嫌の種を自分でみつけられるのだなあ。

私だって、私だって。
上機嫌になってやる。

 
あ。もう出かけなきゃ。
今日は母親の訪問診療。
いい香りのするスポーツマン先生が来る。
もう、くんくんしちゃうぞ。

むふ。