思いもかけなくやってきた駅に降り立つと。
ほう、こんな場所があったんだと思うことがある。

最近は、治療のために、それまで乗ったことのない沿線に行く。
階段を上がって、小さな改札を出ると、坂が見える。
この坂がいい。
向う側に見えないドラマが見える。

本当に小さな駅で、ぐるりと見渡すと、ふうと風が吹いて気持ちがいい。
銀行の看板が見えたので、行ってみると、もう閉鎖されている。
もっと大きい駅に吸収されている。
そうなんだよなあ、昔は、こんなふうにどこの駅にも銀行の一つや二つはあったと思い出す。


私の住んでいる街は、いわゆる中央線沿線というやつで、独特の雰囲気をそれぞれが持つといわれる駅たちが並んでいる。
何十年もそこに住んでいるのには、思えば大した意味もない。
たまたま、だ。

若い頃、たまたまそこに好きな人が住んでいた、たまたま歌の学校があった、たまたま不動産屋さんに寄った、たまたま、たまたまたまたま。

こうしてたまたまの街を、東西南北と何十年も住んでいるが、病院通いで出逢った街に、この頃は住みたくなっている。
今の街を卒業したら、ひょっこり移るのもいいなあと思う。
親をきちんと見送ったあと、引っ越しなどできる余裕があるのかどうかもわからない。
でも、もし、それを未来というなら、この引っ越しを未来の「希望」にしてみたい。

いや、住みたい街は他にもある。
転々とあちこち放浪してみたい。
そんなこと思って、今のわが身を見ると、もう若くないことにガクゼンとする。
膝もまた痛くなってきたじゃないか。
ココロだけは、風のように放浪しているのに。

うまくいかないもんだなあ。
などつらつら思う週末であります。


「知らない街を歩いてみたい
 どこか遠くへいきたい」

いい歌だなあ。