戦争が始まったせいか、コロナのことが、ちょっと軽くなってしまった。
また増えているとか、7波に入ったとか、そんなことが、そりゃあタイヘンなことではあるとわかっていても、どうも軽くなってしまった。

やはり戦争は、すべてを越える。
ウクライナだってロシアだって、兵隊さんだって、避難民だって、同じコロナ時代なのに、マスクしてる人なんていない。
ウィルスはどこにいったんだろう。
現実世界のあまりの悲惨に、ウィルスもどこかへ退散したのか。


先だって、もう数年ぶりになるデパートに入った。
デパ地下には、たまに行ってはいたが、洋服などある階上には、トンとご無沙汰していた。
新宿伊勢丹。
私はこのデパートの回し者ではないけど、ここは、やっぱりほんとにスゴイ。


値段も高いし、数えたらもう五年以上出入りしていない。
コロナ禍にも入ったし、ますます足は遠のいた。
もう、私とは縁のない世界だと思っていた。
ところが。
ところが。

入ってみて驚いた。
ああ、これが服のチカラなんだと圧倒された。
そこには、ありとあらゆる作り手の、それこそ「渾身」があった。
今この時、この色、この素材、この形。
そんな爆発するようなエネルギーが満ち満ちている。

長い間ご無沙汰していたこともあったろうが、閉塞状態のこの時代だからこそ生まれたものたちだと思えた。
もう、アタマが飛んでいく。
目も開かれて、肩や背中を揺すぶられる。
服のチカラに揺すぶられる。

こんなことは初めてだった。
服たちを見ていて、こんなにエネルギーをもらい、そうだ、しっかり生きていかなくちゃと思うなんて初めてだった。
負けないぞ、負けないぞ。
世の中には、こんな美しいものがあるのだ。


破壊されつくされた都市の、モノクロームの映像ばかり見ていた心が、ムクムク起きあがった。
私たちは、美しい世界に生きたい。
泥にまみれた灰色の世界になんか生きたくない。
誰だってそうだろう。
そうだろう?


そうだ、たまには伊勢丹に行こう。
買わなくても見に行こう。
そこへ足を運ぶエネルギーを持とう。
もういいわ、なんて思わず、服やモノたちからエネルギーをもらおう。
カタチも色も素材も、作り手がココロを込めた「今」を見に行こう。
なかなか買えそうにもないけど、見るのはタダ。

あ、伊勢丹さん、すみません。