青い光に照らされたキエフの街が、夢に出てきて、早まる心臓の鼓動で起きた。
まだ3時だった。

このところ、ウクライナから逃げていた。
その映像を見るのがツラい。
情報はいやでも耳に入るので、目からのニュースは避けたい。

ところが、夢に出てきた。
逃げられない。

西に逃げているビーちゃんから連絡はない。
ビーちゃんとフェイスブックでやりとりしているスタッフツヅラから、電話がくるとドキドキする。
どうやらまだ無事なようではありそうだけど、確かなことはもうわからない。
無事に家族を逃してあげられたのだろうか。


父親のホームに行く。
父親は、ますます「今」しかなくなっている。
今自分が何をしているのか、どこにいるのか、どこで寝ているのか。
それは「今」を通り越して「一瞬」にも思える。

「あれ、ここどこだっけ、どこに寝てるんだっけ」
「ここは、パパのいるとこだよ。ご飯食べて、お風呂入って、みんな親切にしてくれるでしょ」
この会話になると、そろそろ面会時間も終わりだ。

これまで「今」だった時間が、どんどん短くなっている気がする。
「あれえ、ボケてきちゃったなあ」
「大丈夫だよ、職員さんにいっしょに連れてってもらおうね」
と、エレベーターでお別れをする。
父のあったかいカラダを職員さんに預ける。

 世界のどこかでは今日も闘いが
 深い傷を残して続けられている
 一つの人生が駆け足で過ぎる
 そしてその向こうには命尽きる日が

ジャック・ブレルの「涙」。
大先輩しますえよしおさんの日本語詞だ。

この歌詞をしますえさんにいただいたのは、「銀巴里」に入ったばかりの頃。
それから40年も経って、言葉たちはもっともっと深くなった。

気がつくと、ココロの中で唄っている。
声のない声で唄っている。