時々、微熱の出る母親。
37度くらいで、ちょっと汗が出るとすぐ下がる。
このところも、そういう日が数日。

昨日。とてもあったかくなったこともあり。
父親の面会に行くという私に。
「あたしも行く」
今日は熱もないしね、という。

自転車ですすすと行って、帰りにお寺の境内で深呼吸して、おでん買ってという「息抜き」を想定していたが急きょ変更。

タクシーを呼び、母親を乗せる。
「ああ、しんどい」を繰り返す母親だが、父親の顔を見たいという欲求が勝った。

ホームに着くと、なぜか玄関前の事務室に父親の姿が。
これまでこんなことはなかった。
私が訪問し、それから父親を呼びにいってもらうという段取り。
「あれ、父さんどうして」というと。
「待ちきれなくなったらしくて」と職員のかた。

母親が一緒などとは知らない。
これが夫婦の虫の知らせというか、絆とでもいうものか。
私の隣に母親の姿を見た父親が、おうと片手を上げる。

もう三か月近くもあっていない二人だ。

コロナのことがあるので、部屋には行けない。
広い談話室のような場所で、三人。
父親の話も母親の話も、よくわからない。
でも、二人には通じるのだ。
それでも、やはりどこかぎこちなく、やっぱり三か月のブランクはあるのかなあと思いながら、帰り支度。

すると。
母親が、突然、父親に抱きついた。
小さい母親が、父親の腰あたりに、手をまわす。
父親も、母親の肩に手を置く。
ぽとんと二つの姿が重なっている。


まいったなあ。
また、まいったなあ。
これで、また眠れなくなる。


案の定、今朝も夜明けに目が覚め、眠れなくなった。
どうしたらいいんだろう。
二人でいられるようにするには、どうしたらいいんだろう。
ここ数カ月も考えあぐねたことが、アタマをぐるぐる回る、また回る、回り続ける。

私がお金持ちなら、二人ともここのホームに入れてあげたい。
でも、そりゃあ無理なんだなあ。
それに母親は集団生活が無理なんだなあ。
ホームで、父親から離れない母親の姿が見えるよう。
社会性ないもんなあ。


ああだこうだと、こうしてまた一日が始まる。
微熱が出そうなのは娘のほうなんだなあ。