父親の確定申告に行く。
もう父親は一緒じゃないけど、行く。
いつもどおり行く。

そしていつも通り、道を間違う。
この角をこう入って下がって行くとあるはず。
そう思って行っても、ないことがある。
それがオモシロイ。

それでも、だんだんに覚えてしまう。
頼んだわけでもないのに小さく「ここを左に何百メーター」と書かれた看板がある。
でも、それがあまりに小さいので見落とす。
そうするとオモシロイ。
見落としたほうが、たいていのことはオモシロイ。


昨日ははじめて、歩いて税務署に行った。
思ったより近く、きょろきょろと閑静な住宅街を行く。
とぼとぼいろんなことを考えながら歩く。
ずうっと父親がしていた申告。
それを私がするようになってから、もうどれくらいだろう。
数字には強いはずの父親が、それを手放すのは、プライドも手放したことなんだろう。
そこらあたりから、いろんなものが私に渡された。


だいぶ増えた医療費を見ながら、さて来年はどんなふうに書くのだろうと思った。
一年一年と変化していかねばならないことごと。
そんなことを思うと、肩から背中がきゅうと痛んだ。

帰り道、解体工事現場があった。
解体されている途中の建物を見ると、足が止まる。
こんなもんなんだなあ、こんなもんなんだなあ、一生懸命建てても。
重機の一振りで打ち砕かれる壁た天井を見ながら、ああ、だからこんなもんなんだな、やっぱりそうなんだな。

そんな工事現場の上には、ほんとに綺麗な冬の青空。
ただ青い、ぐるっとたくさん青い。みごとに青い。

うん。歩こ。