夕食前の入浴の頃。
母親が急にお腹の調子が悪くなったという。
それでも、何とかお風呂から出て、それからすっきりと。
「ああ、わかった!わかった!」と、弾んだ声で言う。

「あれあれ、あれ飲んじゃったせい!」
その「あれ」とは、イチョウ葉エキス系のサプリで、以前は毎日飲んでいたのに、すっかりご無沙汰していたもの。
私が、この歳でもアタマがちゃんとしてるのはイチョウ葉飲んでるからよ、とよく自慢していたのに、そのことを忘れてしまっていたもの。

そんな母親が、このところの記憶力や理解力の低下に不安を覚えたらしく、冷蔵庫にほったらしかてあったそのサプリを取りだして飲んだ。
いったいいつまで飲んでいたのかわからないものを、飲んでしまった。
変質してしまっていたものを飲んでしまった。

「ああ、わかったわかった、やっぱり普段しないことをしちゃだめねえ」と、ホッとした声で納得している。
普段飲んでたことを忘れてたことは・・・。もういいや。
こんなに喜んでる。


でも、確かに、最近の母親の理解力は落ちている。
耳が遠くなったというだけではない低下がある。
そのせいで、こちらがストレスを感じることも増えた。
でも、しょうがない。
それに、私自身がすでに低下している。

モノや人の名前など、驚くほどすっきりと消える。
湯川さんに言わせると「そんなのダメ、早すぎる、なんとか思い出しなさい」
確かに湯川さんの言葉はよどみない。
先だっての「徹子の部屋」で驚いたのは、外国のミュージシャンの名前がすらすらと出てくることだった。
まったくすらすらと、事前の予習なしに。
ただただ感嘆した。

どうしよう私。
朝もぼんやり。夜もぼんやり。
親の世話をする昼だけなんとか。

どうしよう私。
イチョウ葉、飲むか。