「晴天を衝け」が終わった。
名前の覚えにくい武将系でもなく、成功者の渋沢栄一が主人公なので、安心して見ることができた。
最後に悲惨に死ぬことがわかっている主人公だと、やはりどうも見続けるのはつらい。


渋沢栄一さんは、一万円の肖像画になるらしいけど、そのお顔は、あんがいと知られていない。
ふにゃとした、どこにでもいるようなお顔なので、偉人として記憶に残りにくかったのかもしれない。(なんと失礼な)

そこへいくと、この方を演じた吉沢亮さんが、あまりに図抜けた美男子なので、こりゃあ困った。
べつに私が困ることはないけど、いつまでたっても美男子なのは困った。

昔はドラマだと、年齢をそれなりにしていくメイクなどをこれでもかとしていたけど、最近はそれがない。
それはそれでいいけど、まだ20代の吉沢さんが、おじいさんにはどうしても見えない。

40代50代の俳優さんと並ぶと、どうも無理があるし、孫や子と同じ年代に見えてしまうのも困った。

つやつやと張り切った皮膚は、設定を裏切るし、まあそんなこといえば、渋沢栄一さんと吉沢亮さんを重ねること自体に無理がある。
(渋沢さんごめんなさい)


ところが、このあまりに「わからない」渋沢さんというかたが、最後にわかった気がした。
ドラマが終わって、おまけみたいなところで、渋沢さんの映像が映った。
ふにゃりとしたお顔で、ふにゃりと笑う。
まあ、そのチャーミングなこと。

この人はやはり稀代の「人たらし」だったのだ。
なんだか人を引き寄せ、良い気持ちにさせる、この人となら何か一緒にできると思わせる、そんな人たらし。
ひどく有能で切れ者なのに、無防備なところを持つ、そんな人たらし。
無防備は、最高の防備だ。
いや、そんなことができる度量が最高の防備だ。


この笑顔での一万円札なら、どれだけ楽しいだろうなあ。
見るたび、励まされるのになあ。
(笑顔のお札ってのはどんなもんでしょう)