睡眠薬とは言わない、睡眠導入剤と言う。
これまでも何回か、この系統の薬について書いているが、一番有名なのがマイスリー。

ちっちゃいピンクの粒で、これなら害もないだろうと思える薬。
これにはずいぶんお世話になった。

この薬を処方してもらうのに、近所の医者ともめた。
その医者は、これには禁止されている成分があるので、厚生省でもなるべく出さないように指示しているという。

え、でも先生、これまでのお医者さんは、皆さん出してくれましたよいうと、気色ばんだ。
「そんならそっちへ行ってください」


そんなこともあって、その医者には行かなくなった。
でも、マイスリーでなくベルソムラという薬に変えて、これならいいだろうと、またその医者に行った。
なんといっても近いし、スーパーの前だし、便利なのだ。

この薬、日本でできたもので、安全性も高いというのだけど、唯一の特徴が「悪夢を見ること」とされている。

これには、たいていの人がビビる。
私もびびったし、実際そんなこともあった。
でも、夢というのは、かなりそんなものだ。
舞台に間に合わないようなじりじりした夢は、薬と関係なく見てしまうものだ。

で。
そんなこともどうってことなく、いわゆる普通に夢を見る睡眠生活になった。
(マイスリーはそういえば夢を奪う種類のものだった)
緩やかで、たいてい6時間、罪悪感もなく、普通に寝て起きる。


で、昨日また、その医者に処方箋をもらいに行く。
コロナのせいもあって、町医者は空いているところが多い。
「ベルソムラって、悪夢見るんだよねえ。これでみんな嫌がっちゃうんだよね」
まるで、自分もそれを飲んで試しているような口ぶり。


先生、お飲みになったことあるんですか、と聞きそうになる。
というのも、この人は「知ったかぶり医者」なのだった。

薬そのものも見たことがない、とわかっていたし、要するに、この人は上から目線の医者なのだった。
ナニカしら言いたい人なのだ。
パソコンを見て患者を診ない種類の人。


でも、昨日はむかついた。
こうして、ツマラナイ先入観を患者に持たせて、怖れさせる。突き放す。
ワラにすがるようにやってくる患者に寄り添おうなどとは思ってもいない。

もし、私のようにベルソムラが合っていて、助けられる患者がいたら、どうするのだ。
そう言う人の可能性をつんでしまう、心ない一言。
科学的でも合理的でもない医者の意見が、どれだけ患者を心細くさせるのか、まったくわかっていない。


「なんで眠れないのかねえ」
この一言を聞いてから、私はこの人を信用していない。
でも、なんたって近い。
ただの薬処方箋人だと思えば、耐えられる。


あ。
母親から電話。
また父が大変そうだ。

では行ってきますっ。