今の朝ドラ。
タイトルの「カムカムエブリバディ」

これって、父親が昔よく唄っていた。
しょしょしょじょじのメロディに合わせて、私に唄って聞かせた父親は、それはもう若かった。

その頃は、男というものは、家に帰ると和服に着替えていた。
「えもんかけ」に掛けられたそれを、背広を脱いだあと、さささと羽織り、きゅきゅきゅと前で結んだ帯を後ろに回して終わる。
その一連の動きは素早く、そして、どっかりと腰を下ろす。

そのどっかりと腰を下ろし、アグラをかいた、その窪みに小さい娘の私がはまる。
そうして食事が始まる。


こんな食事風景は、もう遠い写真の一枚のように思えるけど、60年前の日常だ。

カムカムエブリバディ。
この歌を今、父親は覚えているんだろうか。
まだそのことを聞いていない。


理系なら戦争に行くのが免除されると思った祖父は陸軍の軍人だった。
その指示通り理系の学部に入った父。
本当は英語が勉強したかったんだよ、とよく言っていた。
だからクミちゃんは後悔のないように好きなことをして生きろ。

好きなことをして生きろ。
そうして、今こうして私は生きている。


父親がどんどん弱くなって、それを自分でも情けなくて、恥じていて。
まるで、昔から父親がこんな風だったと思いそうになって。

そんな時、カムカムエブリバディの歌が流れた。

私も唄えるよ、ハブサムキャンディー、ワンエンド、ツーエンドスリーフォーファイブ。
ところどころ忘れてるけど、唄えるよ。

父さん、唄える?