子供の頃。
親が連れ立って選挙に行くので、私もついていった。
厳粛な雰囲気で、父親が「誰だっけ?」と隣の母親に聞くと、母親は「しっ」と言った。

選挙では、選挙会場では、誰かが誰かに話しかけるのはタブーなのだということだった。
そこはオトナの場所なのだと思った。


こうして、両親が選挙に必ず行く家だったので、というより、その頃は選挙に行く人は多かったのだろう。
戦争を経験して、選挙というありがたいものをもらって、誰もがそれに行く、という時代だったのだろう。
そんな空気で育ったせいか、大人になって私も選挙には必ず行くようになった。


期日前投票もない時代、行けなかったときは、とっても悪いことをしたような気になった。
それが今はどうだ。
衆院選挙でも50パーセント代の投票率。
私だって、ちっちゃい選挙には行かないこともある。


投票しないと、選挙速報がもっと楽しめない。
と気づいてからは、なるたけ欠かさない。
それが、昨日あたりは、なんだか楽しくなかった。

自分の投票した候補は当選したけど、なんだかあんまり楽しくない。
すぐにテレビを消した。

もうなんだかテレビにも飽きた。

小選挙区で落ちても比例で当選するシステムにも、ほとほと飽きた。
というか、この小選挙区制にも飽きた。
なんだか、すっかり全部に飽きた。


「選挙行かなきゃダメだよ」と、いつも行かないのに速報だけは楽しんでみている友人にハッパをかけ、投票させたが。
「ぜんぜんつまんないよ」と、夜電話があった。
出張前に早起きして行かなきゃよかったという言葉に、返す言葉が見つからない。
投票率あがんなかったじゃない、という言葉にも何も言えない。


さあ、困った。
こりゃ困った。

選挙は希望だよ。
私たちができる希望の手段だよ。
そう言いたいのに、なんだか言葉がでない。

なんだかつまんないなあ。
やっぱり、みんなが参加しないとつまんないなあ。
半分の人しか参加しないものは、どんなもんでもつまんないなあ。


選挙って楽しむもんじゃありませんっ。と言っていた識者もいたけど、やっぱり楽しみたいなあ。
自分のたったの一票を、無力と思いたくない。
そのために楽しみたいのだなあ。
一生懸命楽しみたいのだなあ。