家事もろもろを終え、さあ、帰ろうと玄関に行くと。
父親がいない。
靴はあるがサンダルがない。
庭にもいない。

ええっ。徘徊か。

すぐ徘徊を思い浮かべるのは、いたしかたない。
何が突然にあっても、もうしかたない。
といつも思って覚悟している。

家の前の公道に出てきょろきょろ探す。
以前には、自転車で探しに行ったこともあって、その時はどこにもいないので戻ってきたら、ドアを開ける父親がいた。
ほんとにホッとした。


でも、その頃と今は健康状態も違うし、と思い案じていたら。
向うから、父親が歩いてきた。
なんだかホームレスのようだ。
よれよれだ。


母親と二人で、無事を喜ぶがもちろん注意もする。
「パパ、ボケ老人みたいだったよ、ダメだよ外行っちゃ」という母親に。
「脚、弱ってきたからなあ、歩かないと」と父親が、母親の顔を覗き込むように答える。


こんなふうに外を歩こうと思えるようになったことが、奇跡にも感じる。
一か月前には、もうこれでおしまいかもなあ、と思うような姿だった。
もうカウントダウンが始まったのだなと思う毎日だった。


それが、どうだ。
復活してる。

母親の父親へのプロポリス大量投与作戦が、功を奏したのか。
それはわからんが、よろよろでも、外を歩けるようになったことはすごい。


この生命力。
ああ、すごい。
昭和ヒトケタの人はすごいなあ。

と、もうすでによろよろよれよれしてる娘は、ただ感嘆するばかり。
で。今日は本人なしで、父親の病院に行かねば。
もろもろの結果とこれからのことを相談せねば。

人一人を見送るのは、先のみえない大仕事だと、またしてもつくづく思うのであります。
とりあえず晴れてよかった。
お天道さま、ありがとう。