お酒が解禁されて。
つくづく思った。
蕎麦屋の酒無しは味気ない。

たいして飲むわけでもない。
一杯か二杯。
ビール一杯か、それに日本酒一合か。
そんなもんでも、全然違う。

蕎麦を注文するまでに、板わさとか胡麻和えなど頼んでも、お酒がなければ、まったくつまらない。
なので、入ったらすぐ「しっぽく蕎麦」とか「鴨なん」とかいって、食事。
これはほんとに、味気なかった。

昨日あたりは、隣のテーブルに二合徳利の冷酒と天ぷらと、しめに蕎麦をサクッと食べ帰っていく男性がいて、みほれた。
ああ、正しい蕎麦屋の図。

私は、一番小さいグラスビール。
ふううと、ため息。
やっぱうめえわ。とレンコンの天ぷらをつつく。


お酒の飲めない、飲まない人たちにとっては、なんの関係もない禁酒時間。
なまじ飲めることを恨みそうになった。

外の空気で、たまたま居合わせる人たちの中で、一献。
これぞ生きる醍醐味。


どんどん減ってる感染者数。
そうはいっても、みんな何も変わらない。
間を開けた座席や、マスク。
もうウィズコロナは、習慣になったのか。

「はーい!!ご家族八名さま!!」
「しばらくぶりでした、またよろしくお願いします!!」

店の女性たちの声が弾む。
こんな華やいだ声、久しぶりに聞いた。
足取りもステップのよう。

二年前には当たり前の景色が、こんなに愛おしい。