今月16日にある「パリ祭番外編」。
20名余の歌い手さんが集まる、夏の「パリ祭」のまさしく番外編。
この音合わせに行く。

私が歌うのは「愛しかないとき」。
ジャック・ブレルの作品で、初めて自分の言葉で唄ったシャンソンだ。

自分の言葉といっても、もともとフランス語もわからんし、その翻訳から立ち上げたものなので、基本借り物ではある。

でも、作ったのが28歳くらいの時だったと思う。
愛、というぼうとした概念みたいなものが、本当にあるのか、それが世界を救えるのか。
そんないかにも若者ぽい熱をもった言葉になった。


でも、今でも、その言葉を唄うと、ときどき涙がでるほど悔しくなったりする。
「泥に埋もれていく夢や希望」が見えたりする。
「開いた銃口に話しかける虚しさ」がわかる気がする。

そんな時、私は28歳になっている。
いや、28歳でも67歳でもおんなじなのだ。

人はそんなに変わらない。変われない。
胸の奥深くにある魂の熱は、きっと変わらないのだろう。
その魂の色も、きっと変わらないのだろう。


このシャンソン「愛しかないとき」を唄うのと、中島みゆきさんの「世情」を唄うのと、私にはまったく同じだ。
世界と自分。他者と自分。

あなたと私の愛は、もっと広い愛がなければ成り立たない。
世界が愛に溢れなければ、あなたと私の愛はない。

そんな気持ちで唄ってきた。
これからも、それは変わらない。

ただ、今は。
少しずつ小さくなる父と母の愛を、そばで見守ることが、一番の務めだ。