40才を過ぎてしばらくした頃。
昼間ランチをやっている知り合いの店で、夜バーをやった。

その頃、どう生きていっていいかわからず、たまたま遊びに行ったその店が、雑貨であふれていて、そんなら「雑貨バー」をしようと思い立った。

店の名は「ZAKKA BAR」
知人の母娘とは、長い付き合いでそのイノセントとでもいうべき、邪心のなさ、あるいは常識外れなところが唯一無二で、クミコちゃんやりなよやりなよ、と背中を押してくれた。


思った通り、客は来なかった。
シロウトの作ったカクテルなど誰が飲みたいと思うだろう。
ぬいぐるみやおもちゃなどの雑貨に囲まれて、一服したいと思う人がいるだろうか。
何より、こんな不愛想なママだ。


で、結局数カ月で、店は終わった。
ちょうど酒棚にあった、スピリッツが底をついたころだった。
ヒマなので、ほとんど自分で飲んでしまっていた。


そうだよね、うまくいかないんだよね。
じゃあ、しょうがない、歌を唄って生きていこう。

いつでも歌なんてやめられると思ってきたのに、結局なんとかやれそうなことは歌うことだけだった。


昨日、胸の奥がひりっとする、その思い出の店に行った。
そこで、ちょっとした撮影をした。
PVの中に入れるシーンを撮った。

英介さんにも登場願って、二人で出た舞台の写真など開いた。


約30年前の私たちは、当然若く、英介さんの美しさは、今のビジュアルバンドのスターのようでもあった。

ああ、懐かしいねえ。

でも、今も私たちは生きている。
何も終わっていない。

いつもいつも、そうして永遠に頑張って生きていくしかない。

ゴールなんてないんだなあ。
たとえば、子供がいて孫ができて、なんていう人生の軌道が私たちにはない。

撮影場所を店の近くの公園に変え、そこで世間話をする。
どうやったらうまくアチラにいけるか。
このごろ、そんな話題が増えた。
みんなに迷惑かけずに、きちんとやることやって、でもって誰にもお別れの会なんてしてもらわず、ひっそりとアチラへ行くにはどうしたらいいんだろう。 

こんなことが話題になる。
これが十年ひと昔を三回。三十年の重みだ。


思ってたより人生は早い。
思ってくらい人生はしんどい。
でも、やっぱり人生は楽しい。おかしい。
二度とごめんだけど。