事務所に行くと。
スタッフヤマザキが、先だって私の出演していた「三都物語」のビデオを見ている。
正確に言うと、その中の最後の歌「一途な夏」の場面を流している。
サンバの軽快なリズムに乗って、出演者がみんなで唄ったり踊ったりしている。

うまずたゆまずー、いちずな―なつー。

「もう、なんだか気持ちがウツみたいになっちゃって。
オリンピックがあっても、その場面になるとテレビ消しちゃうんですよねえ。
でも、この歌聞くと元気出るんですよ。
うまずたゆまず一途な夏、のとこがピッタリきて」


サッカー好きの彼ですら、こんなに気持ちが乱れているのだ。



うまずたゆまず。
この言葉は聞きなれない。
けっしてあきらめず、すねもせず、びよよんと伸びきりもせずいること。
おそらく、こんなところだろう。

もうすでに古語のような感じがするけど、なんだか今の状況にフィットしたのだなあ。



事務所を出て、両親のための弁当を買いに伊勢丹デパートに行くと。
もうそこは、人の波だった。

波をかき分け、たどり着いた和食弁当屋さん。
店員のおじさんが、今どき珍しいくらい感じが悪い。
こういう人と出会うと、なにかしら言いたくなるのだけど、それは止めた。
そんなエネルギーがもったいない。


そそくさと買い、親のところに行く。
父親はもうすっかり元気で、このところ急速に親密度を増している母親共々、幸せそう。
なんか、二人の上にハートマークが浮かんでいるような。


まあ、しょうがない。
この二人を支えよう。
と、これまで何十回も思ったであろう覚悟を決める。


そうさ、一途な夏さ。
うまずたゆまず一途な夏。
そして、一途な秋、一途な冬と続くのさ。

うん。