いつまで録音物を出せるのか。
そんなことを、スタジオに行くたび思う。

それは、気弱になったということではなく、いや、もしかしたらそうかもしれないけど。
やはり、この音楽状況や、自分自身の状況など、思う。


なにしろ、どれもしんどい。
なかなかのものだ。

でも。
いやはや今日はもうあかんわあ、と疲れ切ってスタジオに行くと、その前のあかんわあ、のしんどさを忘れてしまう。
それが音楽の素晴らしさなのだなあと思う。

昨日は「人生のメリーゴーランド」の歌入れ。
村松さんの再アレンジに合わせて、歌を吹き込む。
「ハウルの動く城」をジブリの試写会で見て、そのオープニングから引き込まれた美しいワルツ。
ぜひとも唄ってみたいと、宮崎監督にお願いし、快諾を得て、それから覚さんの作詞がはじまり。

さあできあがったぞ、と思い、一応監督にも見てもらおうとファクスしたら、「いやいや、映画の内容とは関係なくクミコさんの人生のメリーゴーランドにしてください」との電話。

レコーディングも迫る中、呆然とする覚さんの姿を、いまでも忘れられない。
カラダからなんとも言い難い炎のようなものが見えた。

「監督ってこうなのよね、もう有無を言わせないライオンみたいなのよね」と巨人を前にした諦めと悔しさの混じった炎だった。

そして、出来上がった詞は、今回のアレンジで、思わぬ豊かさを持った。
どちらかというと、わびしさをもった言葉たちが、広い空間に放たれた感じ。


こうして、「十年」と「人生のメリーゴーランド」がシングルになった。
十余年を越えて、やっと実現できた。
同じメロディー、同じ言葉たちが、今の歌として生まれかわった。


もう、なんかふううとしてしまう。
もうこれで私のレコーディングキャリアが終わってもいいかと思ってしまう。


8月リリースだが、どうやら大阪公演では、このCD付きらしい。
なんとまあ、すごい。

ともあれ、皆さまに早くお聴きいただきたいと思っています。