東日本大震災後から参加させていただいている「パリ祭」。

石井好子さん、芦野宏さん、戸川昌子さんら、シャンソンの大先輩たちが作り上げた、この音楽の祭典。
そこに、永六輔さんも加わって、それは華やかなものだったろう。

今は、その方々のどなたも天国に移住してしまわれた。

そして、このコロナ。
去年は中止。

そして、今年は、NHKホール工事のため、はじめてオーチャードホールへ。


自虐でもなんでもなく、私はやはりナンチャッテシャンソン歌手だと思う。
驚くほど、シャンソンを知らない。
たまたま「銀巴里」に入ったのでシャンソンと縁ができた。

そのくらいの者なので、「パリ祭」に出演することは思いもせず、遠いところの出来事のように思っていた。

でも、こうしてご縁ができて、年に一回、他の歌い手のかたがたと会えることが、だんだん楽しみになってきた。
残念ながら、この世ではもう会えないかたも増え、心の底にぽかんとした虚ろを感じるけど、それだからこそ、歌を唄えることの喜びも思える。


今回私は「広い河の岸辺」を唄う。
え、これってスコットランドの歌じゃない、と確認したら、フランスでもヒットして、良く唄われる歌だと言う。
なので、ぜひとも、と言う。

なんとまあ、うれしいこと。
もっとうれしいのは、女性コーラスがご一緒のこと。
12名の歌い手さんが、ずらっと並んで、声を合わせてくれること。
この閉塞感の中、明日が見えない中、ちっぽけな小舟で大きな河を渡る歌を、みんなで唄えるのは本当にうれしい。

みんなで渡ればこわくない。
どんな絶望も、勇気で希望に変えられる。


そして今回から、バンドマスターがアコーディオンの桑山さんになった。
長い間、ピアノの岩間南平さんが率いてこられたが、体調不良もあり退かれた。
こうして、世代交代が進む。

ふと見返れば、歌い手さんも若い方が増えた。
シャンソンに関わってくれる若人がいることも、うれしい。


さて、いつまで唄っていけるか、私。

まあ、とろとろまいりましょう。
がんばりすぎず、両親の世話以外は、いやなことを極力せずとろとろまいりましょう。

どうせ死ぬまで生きるんだから。
そう思えた「パリ祭」リハーサルでした。