だんだん暑くなってきて。
それでなくても、こういう状況なので。
もう、いい気持になることを考えよう。

てんで。
先だってなくなった田村正和さん。

亡くなったかたを思い、良い心持ちになりたい、というのもどうなのかとも思うけど。

この方を見ると、本当に気持ちがよくなる。


古畑任三郎も、眠狂四郎も、なにしろ、どんな役も、みんな気持ちがいい。
それはもちろん、そのお姿が良いせいもあるけど、田村さんご自身の屈託のない透明さによるところも大きい。

見れば、時代劇以外は、どれも同じ髪型に見える。
話し方も、佇まいも、みんな同じに見える。
ただ、そこに田村正和さんがいるだけだ。

なのに。
気持ちがいい。


時々、歌い手で、歌によって何も変えていないのに気持ちのいい素晴らしい歌を歌う人がいる。
そんな人になりたいと思うのに、それほどむずかしいことはない。

人はなにかしたしたくなる。
声を変えたり、アプローチを考えてみたり。


ただそこに「声」がある。
「その人」がいる。
それだけで気持ちの良い歌であったら、どんなにいいだろう。

これは究極の芸だ。


それを思うと。
田村さんの偉大さが、なおわかる。

そして、ご自身が、最後の仕事の眠狂四郎をご覧になって、これじゃあだめだと身を引かれたこともすごい。
田村さんには、田村さんの線引きがあった。
ただ田村正和として存在するために必要なことが、ご自身にはおわかりだったのだろう。


いやいや、なんとまあステキなかただったことか。
歳を重ねても、ぎたぎたしたところのない、いやらしさのない役者さん。
絹だなあ。
絹のような人だなあ。


また、録画見よう。
見て、しのごう。
このシンドイ時代を。