どうも動悸がおさまらない。
このところ、なんだか弱ってぼろぼろになった自分がいるようでナサケナイ。
そんな思いの中。


ピアニスト桑原あいさんの、コンサートに行く。
オペラシティリサイタルホールでのコンサートにうかがうのは、これで二度目。

新しいアルバム「Opera」を初めのご挨拶から一気に。

この若い女性は、カラダにも心にも強いバネを持っている。
そして繊細な優しい小さな種のようなものも持っている。

そして、それらが人の記憶をたどらせる。

「ニューシネマパラダイス」という名曲で、なぜか、家の前で手を振って私を見送る、小さな母親の姿が浮かんできた。
遠くからだと、私の目も弱くなっているので、またねと振る手の位置が見えにくい。どんどん見えにくい。

その距離の悲しさを、思い出した。
時の経つことの切なさ、を思い出した。


また、前回の時と同じように、マスクの中に涙が落ちていく。


あいちゃんの弱音(じゃくおん)の優しさに、こうして毎回おばさんは泣かされる。
そして、ヒョウかチータのようにピアノにのしかかるグルーブに励まされる。


楽屋にいくと、志の輔さんがいらした。

あいちゃんは、今度志の輔さんの公演で演奏をするのだ。
なんて素敵なこと。
毎回、どんな演奏を聞かせてくれるだろう。


若い力。
とはいっても、苦しみもがき迷いたどる、決してハッピーハッピーな道ではない。
それでも、それを越えて歩いていく、この若い女性の音に、私は力をもらう。


私はブログに写真を載せない(いや、載せられない)ので、そのジャケットデザインは、ここでご覧いただけないが。
ああ、こういうアルバム作ってみたかったな、と思うような静かな心象風景にも似た美しさだ。


ジャズピアニストと称されるが、私は彼女を、そんなふうに思ったことは一度もない。
素晴らしい音楽家は、ジャンルを軽々飛び越えて、人の心の中に翼を広げる。


さあ、私も飛ぼう。
怖くても、飛ぼう。

翼がどんな状態でも、飛ぼう。
飛んでみよう。