車椅子を借りに行く。

近所の一軒家が、このあたりの町会建物で、いったい何のためにあるんだろうと思っていたが、こういうためのものでもあったということだ。
(そういえば、町会費なるものを一年に一回回収されるといっていたもの)

おそらく当番制なのだろう。
近くの高齢の女性のかたが、待っていてくれたが、説明が聞こえない。
一緒に連れてきていた、そのかたの小さい犬が、のべつまくなし吠えている。

きゃんきゃんきゃんぎゃんぎゃんぎゃん。

何のおねだりか知らないが、犬にこんなになナメられていていいのかと怒りをおぼえ、本来の用事を忘れそうになる。

良く聞こえないんですけど。
と、やんわり言ってみるが、それより早く退散したい。
早々にお礼を言って引き返す。


母親は、初めての車椅子。
嫌がるが、介護士をしている友人と二人で病院に出かける。

CTとエコーと、検査は簡単だが、なんせ待たされる。
この病院は、働いている人の数は多いが、どうもどこかうまく回っていない。
すっかり疲れ果てていく母親を横に、もうこれからこういう形での診察はあかんなと思う。

器械の必要な検査だけしたら、当人はすぐ帰るれるようにしないと、何のために訪問診療をしているのかわからない。


親を守るのは、家族。
つまりうちの場合は私。

ただでさえコロナの時期、他に良い方法はなかったのかと、夜、くよくよする。



朝方。
夢を見た。

汗にまみれ、顔を上げたら、もうライブの1ステージ目が終わっていたところだった。
「え、あたし、今唄ってたの?まったく意識なかったよ」

はい、もう1ステージありますからね。
とスタッフに言われ、呆然としている。

意識のないまましゃべり唄う。
イヤな汗が流れるような気持で目覚める。


さ。
気を取り直そう。

一か月は借りられるという車椅子だけど。
返しに行こう。