先だって。
戸建てだって、いっさいがっさい、業者に片づけを頼めばいい。
なんて話を書いてて。

それでも、やはり、マンションと違うのは、戸建てにはおおきな「闇」があることだとわかった。

言い換えると、あちこちが闇だらけ。

まず押入れ。
この闇は大きい。

奥も深いから、いったい何がどうなってるのかさっぱりわからん。


昔、今の家に越す前。
前の家の片付けをして、まだ若かった両親が、最後に全部を点検して、家を出た。
「なにもないよね、ないよね」と慎重な二人のこと、念入りに見て回り鍵をかけた。


ところが。

後日、電話。
「一番上の天袋のところに、トイレットペーパーとティッシュの箱が山のように入ってるけど、どうしたらよいでしょう」


やはり魑魅魍魎の伏魔殿になりやすいのが戸建てなのだった。
なんたって、増築だとかいって、大きさ自体が伸び縮みするし、庭には、物置という、より面妖なものまで控えている。


いや、ところが。
それより私が密かにコワがっているものがある。

それは居間の隅にちょこんとある。
周りをビニールでくるまれて、一見なんだかわからんシロモノだが、私は知っている。

ぬかみそ。


ホーローでできた器だから匂いもないが、味噌漬けが食卓に上がったのは、もう記憶にも遠いほど昔の話だ。

そのぬかみそが今ここに。

さっさと捨ててくれればよかったのに。
ぐずぐずと、なかったことにしたい母親が、そのままにして、備品のひとつのように鎮座している。
でも、これはヤバいものなのだ。
核燃料取りだしのようにヤバいものなのだ。
この中身をいったい誰がどうやって開き、そして取り出すのか。


ああ、この一つの処理を考えただけで、動悸の始まる私は、臆病者でしょうか。


誰にも迷惑をかけず、うまい処理の仕方をご存じのかた、どうかお教えください。