かれこれ20年も前。
ホロスコープ、つまり星占いをしてもらった。
今も専門家として活躍している知人の見立ては。
「失言に注意」だった。

だいじなとこで「失言」してしまう。
それが志を折ることになる。
とまあ、そんなことだった。
実際、そんなことばかりだったので、それからは注意をして生きてきた、つもりだ。

失言。
今回の森さんを見ていて、思い出した。

このかた、決して腹黒い陰湿なタイプの人ではないだろう。
鷹揚さもあり面倒見もよく、だからこそ、なんだかんだいってもいろいろな仕事に関わっているのだろう。

ただ、昔から失言の多い人だった。
何でここでいうか。ということが多かった。
でも、どれも「本音」なのだ。
他の人が、隠して言わないことをぽろりと言ってしまう、いわば、この世の中のあぶり出しのような人なのだ。



「ききわけのない女の頬を 一つ二つはりたおして」
という唄い出しがジュリーの「カサブランカダンディー」。
70年代には、こんな歌が、カッコいい歌としてヒットした。
私だってそうだ。
ボギーボギーあんたの時代は良かったあ。と唄っていた。


でも、時代は確実に変わった。
この歌を、気持ちよく唄うことは、もうできない。



昨年。
仕事場で片づけをする、女性スタッフたち。
どういう話の流れだったか。
信頼のおける、仕事もできる、この二人が、突然ぼそっと言った。


「私たちって、闘ってきましたから」
え、どういうこと。
「男社会で仕事するって、死にもの狂いで闘うしかないんです」
「嫌な思いばっかりしてきました」
「たくさん泣きました、悔しくて泣きました」
「でもだから今もこうして仕事ができるんです」

いつも、陽気で明るい彼女たちの口から出た言葉に驚いた。
彼女たちの歩いてきた険しい道のりが見えた気がして、言葉がなかった。
軽い冗談話になどにはできない。
ああ、よく頑張ってやってきてくれました。という言葉を飲みこんだ。

40代の彼女たちは、今も元気にたくましく仕事をしている。
彼女たちの親世代の私は、彼女たちに胸を張れることをしてきたんだろうか。
女性のバトンをつなげられたんだろうか。

どきんとした。