「あまくにおうあなたの 腕の中のわたし」

ああ、まあ。
なんと。
ああ、ああ。


これは、先だって亡くなられた坂本スミ子さんの「目を閉じて」という歌の歌詞だ。

詞が永さんで、曲が八大さん。
美しく甘くとろける美しさ。

この歌を、ツイッター上で教えてくださったのが、音楽プロデューサーの佐藤剛さん。
プロフィールにもあるように「先人たちが遺した仕事の素晴らしさを伝えることで、懐かしむのではなく、これからの音楽シーンを活性化したい」
まさに、このこと。

うっとりしながら坂本さんのことを思い出した。

十年ほど前、一回だけご一緒した。
同じ楽屋で、いろんなおしゃべりをした。
「熊本で幼稚園してるの、子供っていいわよお。今度来てね。ケイコもうちに来てるのよお」

ケイコというのは、私の歌の作詞もしてくれていた植野慶子ちゃんで、坂本さんのお嬢さん聖子さんの親友でもあった。
世間は狭い。

坂本さんの愛は溢れて溢れて強く強く、そうか、こういう愛ってホントにあるんだなあと思った。
腰のひけてない愛だ。


そして、歌に対する自由さも、まったく愛そのものだった。
間違うこととか、段取りとか、そんなことどうでもいい、その場の楽器との交わりを楽しみ愛する。
音楽は愛なんだよなあ、と当たり前のことに気づかされた。音楽も人間も、自由と愛を腕一杯に抱えているものなんだ。


84歳。
昨日、坂本さんのお見送りをした慶子ちゃんからメールが来た。

元気でいればまた会えますね、クミコさん。


そう、元気でいればまた会える。


「あまくにおうあなたの 腕の中のわたし」
このリフレインが、胸を熱くする。
こんな時代だから、よけい。
かきむしられるほど。
熱い。


この歌、スミ子さんからの、素晴らしい遺品のようだ。