何回も何回も手を振り、出入り口から消えていくさっちゃんの姿を見ていた。
また、もう一回、戻ってきてまた手を振る。

またね、またね、元気でね。

さっちゃんは、芳雄さんのお母さんだけど、友だちでもある。
大切な福岡の友だちだ。
そして、てっちゃん(お父さま)も、おばあさまも。

一年ぶりに会えた幸せ。
もしかして会えないかもと、不安だった日々。

日に日に増える感染者数に、ココロは塞ぎ、背中がこわばる。
それでも、福岡にうかがうことができた。


二回のショーは、もちろん芳雄さんの人気あってのこと。
それにご一緒できる私は、本当に幸せ者だ。

芳雄さんは、初めて会ったときから変わらず、奢り高ぶることもない、心の芯に平静を持っている人だ。
それが舞台にあがると変身する。
飛びぬけた技術と熱量で、観客を魅了する。

そのさまを見ながら、こういう人と関われたことの幸せを思う。
私も、あとどのくらいあるかわからない歌い手生活を、無為なものにはしたくないと心の炎が燃える。

できるとこまで、そう、できるとこまで歩こう。


ショーの後、芳雄さんを含めた井上家を見送り、一人打ち上げをした。
コンビニで買ってきてもらったビールとおでんを並べた。

去年は、このホテルのバーで、みんなでわいわい打ち上げをしたのだった。
さっちゃんもてっちゃんもみんなで、いっしょくたで。


でも。またきっと。そんな日も来るだろう。

なにより。
こんな時に、足を運んでくださったお客さま、そしてあらゆる対策で迎えてくださったホテルスタッフに、心から感謝を。


そしてあと二か所、無事に終了できますよう。
穏やかな日々が戻りますよう。
希望をつなぎつつ、この年末を駆け抜けます。

寒さが急に増しました。
どうか、皆さま、くれぐれもご自愛ください。