父親のMRI検査を終え、くたくたになって帰ってくると。
父親は、病院で何をしたかをすっかり忘れていた。

「今日はあそこで何もしてこなかったよね」と言うのを聞いて。
凝った肩がもっと重くなった。

「いいなあ、これだと死んでても生きてても、どっちでもわからないかもしれないね」
と、聞こえないように言ってみる。
皮肉でもなんでもなく、ほんとにそんな気がする。
ものすごく幸せなことのように思える。


そして、昼食を片付けあわてて眼科に行く。
飛蚊症がちょっとひっかかっていた。
イヤな感じがする。

はたして、その悪い予感はあたっていて。
「網膜に穴が開いてます、網膜裂孔ですね」

親身に診察してくれた女医さんは、私が両親介護をしていると知るや、すぐにレーザー治療のできるクリニックに連絡をとってくれる。
女性はみんな「事情」がわかるのだなあ、きっと。


そこから駅をまたいで、また女医さんへ。

ずんずんずんとレーザーが左眼の奥に直撃。
あ、そこそこそこですね、そこが剥がれてきてるんですね、とわかる。

瞳孔を開く目薬ばかりさしていたので、夜になってもまぶしい。
肩も背中も、ばんばんに固まっている。
生きるって長くしんどいなあ。としみじみ思う。


というわけで。
皆さま。もし、飛蚊症が出たら、加齢だと片づけず、まずは診察したほうが良いです。
(あるいは、光がさあっと横切った気がしたら)
私も早く行ったおかげで、網膜剥離という一番やっかいなものの手前で済みました。
眼球は、若いうちには満たされていた水のようなものが、だんだんと減り、そのうち網膜が引っ張られるようなり、そこに穴があき、剥がれる。
とまあ、そんなことのようです。
(私のように、ひどい近視だとなおさららしく)


夜。
瞳孔が開く。
というのは、死んだ時の確認手段だよなあ。
そうかこんなふうになるんだと、真っ黒くなったままの目をしみじみ見た。

この真っ黒い目。
猫なら可愛いんだけどなあ。