しばらくぶりに渋谷。
山の手線に乗るのも久しぶり。

新宿から渋谷までの三駅。
座らず、ドア付近に立つ。
人出も、そう多くないので、空気の流れは良い。

渋谷のコンコースも、この時期なのに、人は少ない。
それでも、このところ、車移動ばかりしていたので、人波をかきわける「カン」が鈍っているのがわかる。


コロナ前。
ハチ公前のスクランブル交差点を、あれだけの人がぶつからずスイスイと歩けることに、外国人が驚いた。
長い自撮り棒を持った外国人たちが、交差点の真ん中で、笑顔のピースサインをしていたのが、もう遠い昔のことのようだ。


人波をぶつからず歩く。
これだけのことで、アタマが活性化していくのがわかる。

そういえば。
鹿児島に嫁いでいった友人、東京に帰ってくると人にぶつかってばかりだと言っていたことも思い出した。


渋谷での仕事を終え、そうとうに伸びきった髪を切りに表参道に向かう。
三か月近く行っていない。

え、どこ切るの、そんなに短いのに。
と、まわりの人には言われるが、本人にはどうもウザい。


「出られるんなら、僕も専門家会議出たかったですよ」
と、カットしながらYさんが言う。
コロナ対策の無策さに、ホンローされつづけている接客業の人たちの偽らざる気持ちだ。

人を雇い、その家族たちも支えている経営者の苦悩と怒りをひしひし感じる。


人と接する仕事、接しないとどうにもならない仕事。
その仕事たちは、今、危機を迎えている。
智恵をしぼって闘っているけど、疲弊してきている。
私たちの仕事も、そう。



カフェの外の席で、お茶を飲んでると、突然目の前に花嫁さんが現れた。
長い白いレースの裾をひき、花婿さんも出てきて、街路樹脇で記念撮影。

そうだった、この建物、ブライダル系だった。
(かつては、いろんなドレスがあって、ブライダルとは縁のない私でも、しょっちゅう出入りしてたなあ)

花嫁さんは、たいていキレイだ。
みんなぴかぴかしてる。
花婿さんは、たいていムズカシイ。
ブーケを胸に白い靴白いスーツ姿は、客引きしてるホストに見える。
結婚式は、やっぱり花嫁さんのものだ。

そうはいっても。
二人の姿を見てると。
ビバ!!結婚!!
って気持ちになるから不思議だ。

お幸せにね。って思う。
がんばれ。って思う。
タイヘンな時代だから、よけい、そう思う。


私はと言えば。
注文したジンジャーハーブティーを三口飲んだだけで、カラダ中から汗が噴き出してる。
ホットでよろしいんですか。って念押ししてくれたウェイターさんの気持ちが、やっとわかった。