毎月二回の訪問診療。

コロナが出てきてから、どこの医者もヒマになったという。
怖くて、医者に行かない。

そのせいか、来てくださる先生は、よく日焼けしている。
そして、元気だ。

「私が訪問している方の最高齢は104歳です」

その言葉に、両親が驚き喜ぶ。
すごいもんですなあ。


家の場合、それはちょっとカンベンしてほしいなあ。
と娘は思う。


先生と看護師さんが帰ってから、今度は父親の歯医者に行く。
なるべく直前に、そのことを言う。

でないと、あれこれいいながら、歯を何回も磨く。
ほんとに行くのか、行かなきゃならないのか。ごしごし。


あと10分くらいで出かけるよ。
それでも、歯は三回磨かれた。

ぐわぐわぺー。
下の洗面所から、音がする。


この頃。
外出が疲れるらしい。
ちょっと前までは、まだ元気だったのが、治療されて、帰ってくると弱音が出る。

「まだ、続くのかなあ」

なんたってヤブ医者だから、なかなか進まないんだよ。
とはいえないので、うん、まだしばらくは行くよ。と答える。


ゆっくり歩いても五、六分程度の距離。
この距離がもうタイヘンになっている。
104歳はないなあ、と思う。


昨夜。
山崎ハコさんの夫、ギタリストの安田裕美さんが亡くなったことを知った。
二人で、楽しそうにコンサートをする姿が浮かんだ。
闘病を支えたハコさんの、今の気持ちを思い。
ああ、なにもできない、今はなにもできない。
ただ、こうして案じているだけだ。


七夕の夜に知った訃報。
そして、天の川どころではない、荒れ狂う空模様。
突然、家のまわりが川になってしまう映像。

なんとも、なんとも、やりきれない。


そう言えば。
七夕に永さんは星になった。

見上げてごらん夜の星を。

永さん、星が見えません。
永さーん。
星、見えませんよおおお。

つらいですよおおおおおお。